こんにちは
日野市の百草園駅前鍼灸院です。
本日も先日頂いた質問に回答していきます。
Q,痛みがない場所にも鍼をするのはなぜ?
A,鍼灸治療では、痛みを感じる箇所だけでなく、一見無関係に思える場所にも鍼を打つことがあります。この理由について、詳しくご説明いたします。
- 中国伝統医学の考え方:全身のバランスを整える
中国伝統医学では、痛みや不調の原因を「その部分だけの問題」とは考えず、身体全体のバランスが崩れた結果と捉えます。身体には「経絡(けいらく)」と呼ばれるエネルギーの通り道があり、不調がある部分に関連する経絡を通じて、別の場所に影響が及ぶとされています。この概念は現代でいう、自律神経に近い部分があると考えています。
例えば、腰の痛みであっても、その原因が足や背中、あるいは内臓機能のバランスにある場合、痛みを感じない部分に鍼を打つことで、全身のエネルギーの流れを整え、結果として痛みを軽減する効果を目指します。
少々専門的になりますが、自律神経で説明をすると交感神経を亢進させると痛みは和らぎます。ただ交感神経だけを亢進させてもすぐに戻ってしまいます。効果を持続させ、自分自身で不調を改善させるためには副交感神経を亢進させた後に交感神経を亢進させることが効果的だと実感しています。このような作用を、鍼で起こしていきます。
- 反応点やツボの効果を活用
鍼灸では、身体全体に「ツボ」と呼ばれるポイントがあり、それぞれが内臓や筋肉、神経などに関連しています。たとえば、手足にあるツボが頭痛や胃痛、肩こりに効果を発揮することがあります。
痛みがある場所だけに直接アプローチするのではなく、全身の関連するツボを刺激することで、身体の自然治癒力を引き出し、より根本的な改善を図ることができます。このため、痛みがない場所にも鍼を打つことがあります。
- 筋肉や神経の連動を考慮
身体の構造上、筋肉や神経は連動して働いています。たとえば、肩の痛みが腕や首、背中の緊張から来ている場合、その緊張を和らげるために腕や背中に鍼を打つことがあります。同じように、膝の痛みが腰や足首の使い方と関係している場合もあります。こうした「関連する部位」に鍼を打つことで、全体的な調整が可能になります。
- 予防的なアプローチ
痛みが出ている箇所だけを治療すると、再発のリスクが残ることがあります。痛みが出ていない部分でも、体の緊張やエネルギーの滞りが見られる場合、そこに鍼をすることで、さらなる不調の予防や根本的な体質改善を目指します。
- 痛みがある部分は直接刺激を避ける場合もある
痛みが強い部分や炎症がある場合、その場所を直接刺激すると逆に負担がかかることがあります。そのため、痛みがない周辺部や遠隔部のツボを使って間接的にアプローチし、症状を和らげる方法を選ぶこともあります。
鍼灸治療の目的
鍼灸治療は、症状を和らげるだけでなく、全身の調和を整えることで自然治癒力を高め、根本的な健康改善を目指します。そのため、痛みのない場所にも鍼をするのは、身体全体を一つのシステムとして考える中国伝統医学の特長と言えるでしょう。
もし具体的な疑問や不安がございましたら、施術前にぜひご相談ください。お一人お一人の状態に合わせて丁寧に説明し、最適な治療を提案させていただきます。